「ブートヒル」の視点に切り替え中…… 
ブートヒルと丹恒の意見は一致した。美しき夢に潜り、仲間たちを助けよう……
ホテル・レバリーへようこそ、ご用件を伺ってもよろしいでしょうか？
俺たちは星穹列車のナナシビトだ。チェックインしたいんだが……
星穹列車？ですが、それなら以前……
ああ、仲間たちは先にチェックインを済ませている。俺の名前は「丹恒」、ホテルのシステムに俺の個人情報があるはずだ。
かしこまりました。ですが、お連れの方々はチェックインされる際に、お客様の予定が変わって宿泊できなくなったと仰っていましたが……
ハッ！また予定が変わったんだっつーの。
えっと…こちらのお客様は？
オレは星穹列車に乗ったばっかの新人ナナシビト、名前は「パム」だ。
…こいつは俺の仲間だ。俺たちがファミリーの招待に返事をしたのはこいつが列車に乗る前だったから、システムに記録はないと思うんだが…何とか融通を利かせられないか？
あ！そういえば、先にチェックインされたナナシビトの方々の中に、同じような状況の方がいらっしゃいました。最近は「開拓」の運命に足を踏み入れる方が増えているようですね。
前例がありますので、原則的には問題ないかと思います。今、お連れの方にご連絡させていただきますね──
……
…ええと、申し訳ありません。星穹列車の方々と連絡が取れないようです。
連絡が取れないというのはどういう意味だ？
申し訳ないのですが、私もこのようなことは初めてでして…システムによると、星穹列車の方々はまだ夢境の中にいらっしゃるようですが……
…だったら部屋番号を教えてくれ、オレら2人で行ってみるから。
恐れ入りますが、お二人の身元を確認させていただいた後でないと、お客様の個人情報をお伝えすることはできません。
じゃあ、アンタが適当なヤツを選んで──ヴェルトでいいか──アイツを強制的に目覚めさせりゃいいだろ？
そちらも致しかねます。強制覚醒には厳格な使用規定がありますので、勝手に操作することはできないのです。
あれもダメこれもダメって、アンター体どうしたいんだ？オレと兄弟にここで座り込んでろってのか？
ど、どうか落ち着いてください…お二人の身元を確認するためにも、お連れ様と連絡を取る必要があるのです……
だが、今は先に俺たちの身元を確認しないと、俺たちの仲間に連絡することもできないんじゃないか？
確かに…仰る通りですね。
ったく、ベイビーが！これ以上お役所仕事のたらい回しみたいなマネはやめろ！いいか嬢ちゃん、別にアンタを責めてるわけじゃねぇが、できんなら今すぐやれ。できねえならできるヤツを呼んで来い、いいな？
お客様、お怒りをお収めください！あの時はオーク家の当主であるサンデー様が自ら処理してくださったのです。少々お待ちください、すぐに連絡いたしますから……
彼女は俺たちを困らせようとしているわけじゃない…本当にどうすればいいかわからないんだ。
マズイかもしんねぇな…さっき列車の中でアンタも試してたが、ヤツらから一向に返信がねぇ……
……
俺は気になることがあるから、少しここを離れる、お前はここであの女性を待っていてくれ。
行け、さっさと済ませて帰ってこい。
ホテルロビーで現状を探り、丹恒を待つ
一方、遅れてやってきたカウボーイによって、列車の留守番をしていた丹恒とバムに悪い知らせが届けられた。
美しい夢の奥深くにいる列車組が危険かもしれない──それは「虚無」の使令が夢境の中をうろついているせいだ。すぐに丹恒を説得して、一緒に夢境の奥へと救助に向かったが、ホテルのロビーに入った直後、大きな問題にぶつかってしまった。というのも、ホテルの厳格な規定のせいで、そもそもビノコニーに入ることができないのだ。
その時、敏感にも一抹の異変を察知した丹恒が、まずは単独で調査をすると言い出した。その観点には自分も納得できるものがあったのと、彼を安心させたいという気持ちもあって、一時的に別行動を取ることに賛成した…長年危険に晒されてきたことで培われた直感が告げている──「今は時間がないわけじゃない、情報を集めるのも悪くない」と。
美しい夢の奥深くにいる列車組が危険かもしれない──それは「虚無」の使令が夢境の中をうろついているせいだ。すぐに丹恒を説得して、一緒に夢境の奥へと救助に向かったが、ホテルのロビーに入った直後、大きな問題にぶつかってしまった。というのも、ホテルの厳格な規定のせいで、そもそもビノコニーに入ることができないのだ。
その時、敏感にも一抹の異変を察知した丹恒が、まずは単独で調査をすると言い出した。その観点には自分も納得できるものがあったのと、彼を安心させたいという気持ちもあって、一時的に別行動を取ることに賛成した…長年危険に晒されてきたことで培われた直感が告げている──「今は時間がないわけじゃない、情報を集めるのも悪くない」と。
（仲間が行方不明になって、丹恒のヤツも焦ってるはずだ。少し時間をやるか…心配は判断を鈍らせるからな）
宿泊客と話す
もうすぐ調和セレモニーが始まるね！楽しみだな〜
よう、アンタらも調和セレモニーに参加しに来たのか？
ううん、ボクはたまたま居合わせただけ！実際、セレモニーが何なのかよくわかってないんだ。何だか賑やかそうだけど。
ふん、この程度、アナンリアでは別に珍しくもないわ！お父様が私のために開いてくれた誕生日パーティーは、この調和セレモニーにだって負けてないんだから。
ウソだぁ！調和セレモニーは1琥珀紀に一度のお祭りなんだから、君の誕生日パーティーなんか比べものになるもんか！
そいつはどうかな。彼女の誕生日が1琥珀紀に一度だって可能性もあるだろ？
ま、そんな話は置いといて…聞いたか？夢の中で事件が起きたって話…アンタら、何か知ってるか？
事件？何のこと？まさか調和セレモニーを邪魔するつもり？やめてよ、ずっと楽しみにしてたんだから！
何を慌ててるんだか…いい？こういう大型イベントの前っていうのはね、多少は噂が流れるものなの。心配するのはやめなさい。もし本当に何かあったなら、私たちよりファミリーが焦ってるはずでしょう。
ああ、その通りだな！オレもこの祭りを盛り上げるためにわざわざ駆けつけたんだ。何かあっちゃ困るってもんさ！
（ふん、このベイビーたちは何も知らねぇのか。くだらねぇ話を続ける必要はねぇな）
ハウンド家の人間と話す
こんにちは、私はホテルのセキュリティを担当してる、ハウンド家のコティよ。何かお役に立てることはある？
よう、ちょっといいか…夢の中で、調和セレモニーに影響が出るかもしれない何かが起きたって聞いんだが……
何があったんだ？オレはわざわざハイアイー連邦から来たんだ、無駄足を踏むなんざごめんだぜ！
え…え？
何も聞いてねぇのか？
どこで聞いたのか知らないけど、そんな噂は信じないで。ハウンド家の一員として保証するわ、調和セレモニーはすべて順調にいってるってね。
各クランの当面の最優先事項は、調和セレモニーを予定通りに開幕させること。今回は「夢の主」も第一線に出てくるから安心して、絶対に無駄足を踏ませたりしないわ。
ヘッ！そう言ってくれんなら安心だ。
（嘘をついてる感じじゃねぇな。つまりホテルの従業員すら知らねぇってことか）
丹恒と話す
帰ってきたか。
彼女はまだ戻ってこないのか？
ああ、あの女にサンデーへの連絡を任せたのは失敗だったかもな。
従業員も客も、夢の中の状況を何も知らねぇらしい。どこまで行っても浮かれまくった光景ばかりだ…オレに言わせりゃ、これは決していい傾向じゃねぇ。
ああ、それにおかしなこともある。ピノコニーを治める五大クランの中で、オーク家は議会の主催者であり、夢の内外全ての管理、調整の責任者でもある。だが……
ホテルをひと回りしてきたが、こんな大事な日だというのに、その重要なクランの人間と1人も会わなかったんだ。
ホーリースウィート…オレの記憶違いじゃなけりゃ、サンデーはオーク家の当主じゃなかったか？
ここに長居しても仕方がない、ひとまず列車に戻ろう。
そう焦んなって兄弟。カンパニーとやり合ったことはあるか？いきなり走り出して逃げたりしたら、すぐに街で一番目立つヤツになっちまうぜ？
大人しく待っていろと言うのか？
別に大人しくする必要はねぇが、とにかく今は待った方がいい。ファミリーが何か企んでても、オレら2人が来ることは予想できねぇ。ヤツらにとっちゃ、オレらこそが「不確定要素」なんだ。
ヤツらも軽率に手出しはしてこねぇだろ。オレらが余計な騒ぎを起こしたくないように、ヤツらも無関係な人間を驚かせたくはないはずだからな…見たか？このホテルもカンパニーの犬が見張ってやがる。
…俺がファミリーなら、手続きを理由に不確定要素をここに留まらせる。わざわざ彼らの罠に飛び込む必要はない。
もちろん、ヤツらと一緒に時間を無駄にする必要はねぇよ。実はメモキーパーに「予備プラン」を伝えておいたんだ。もし本当に夢境に入れなかったら、そいつが現実のホテルのVIPルームに酒を1本用意してくれる。
それは合言葉か？
そうだ。
確かにメモキーパーとは物を介して連絡を取ることができるが…ブートヒル、これからは予備プランがある時は先に教えてくれ。
悪いとは思っちゃいるが、これがオレの習慣なんだ。オレには悪友が何人かいるんだが…予備プランがあるなんて言ったら、全員それ前提で動いて必ず何かやらかしちまう。そうなったら、いくら予備プランがあっても足りねぇからな。
「渡世の知恵」を使う
一方、遅れてやってきたカウボーイによって、列車の留守番をしていた丹恒とパムに悪い知らせが届けられた。
美しい夢の奥深くにいる列車組が危険かもしれない──それは「虚無」の使令が夢境の中をうろついているせいだ。すぐに丹恒を説得して、一緒に夢境の奥へと救助に向かったが、ホテルのロビーに入った直後、大きな問題にぶつかってしまった。というのも、ホテルの厳格な規定のせいで、そもそもビノコニーに入ることができないのだ。
現実にしろ夢の中にしろ、今のピノコニーは決して「正常」とは言えない…丹恒との間で意見が一致した。いつものように予備プランを用意しておいてよかった（別にいいことではないが）──いよいよ「渡世の知恵」を使う時だ！
美しい夢の奥深くにいる列車組が危険かもしれない──それは「虚無」の使令が夢境の中をうろついているせいだ。すぐに丹恒を説得して、一緒に夢境の奥へと救助に向かったが、ホテルのロビーに入った直後、大きな問題にぶつかってしまった。というのも、ホテルの厳格な規定のせいで、そもそもビノコニーに入ることができないのだ。
現実にしろ夢の中にしろ、今のピノコニーは決して「正常」とは言えない…丹恒との間で意見が一致した。いつものように予備プランを用意しておいてよかった（別にいいことではないが）──いよいよ「渡世の知恵」を使う時だ！
どうやってVIPルームに入るつもりだ？
なぁに、渡世の知恵を使えばいい。オレに任せとけ。
ロビーマネージャーと話す
アンタがここのコンシェルジュだな？
ええ、そうですが…何か御用でしょうか？
オレらは星穹列車のナナシビトだ。チェックインを頼んだんだが、ずっと放っとかれてよぉ…フロントのお嬢さんは責任者に連絡するっつって、そのままいなくなっちまった！
オレら兄弟はここで待ちぼうけ食らわされて、水も飲めなきやメシも食えねえ。ベイビー、これがファミリーのおもてなしなのか？
おい、お前の「渡世の知恵」は言いがかりをつけることなのか？
これは正当な権利の獲得ってヤツさ。
お二人とも、ご安心ください。経緯はすべて伺っておりますが、まずはサンデー様と連絡を取る必要があるのです。ひとまずVIPルームのバーにご案内いたしますので、そちらでお寛ぎいただきながらお待ちください。
ほら、いけただろ？
…次からナナシビトを名乗るのはやめてくれ。
VIPルームの椅子に座る
「渡世の知恵」を使って得るべき権益を勝ち取った。哀れなロビーマネジャーがあなたの脅しに耐えかね、VIP休憩サロンの席を手配してくれたのだ。取るに足らないサービスに思えるが、これも予備プランの一環であることをあなたは理解している…今はただ、もう少し物事がスムーズに進むことを祈ろう。
……
へえ！さすがは宴の星、現実のバーもこんなに立派とはな。
ようこそ、ずいぶん勇ましい客だな。
よう…兄さん、ここで「アスデナのホワイトオーク」を1本予約しといたんだが、探してもらえるか？
アスデナのホワイトオーク？記憶違いじゃないか？ここにそんな酒はないぞ。
そんなはずはねぇ、もう一度よく思い出してみてくれ。
そんな高い酒を誰かが予約してたら、俺は絶対に忘れないさ。なんせ1本で何十万信用ポイントする酒だ…万が一割ったり失くしたりしたら、俺には弁償できないからな。
おかしいな…あのメモキーパー、まさか金がなくて買えなかったのか？
どうする？
まあいい、とりあえず何杯か飲もうぜ。オレが早く来すぎせいで、あの女が間に合わなかっただけかもしんねぇからな。
どれどれ、どんなシングルモルトジュースがあるんだ…「ゲヘナ40年」、ストレートで頼む。
そいつはドリンクメニューで一番高いやつだ。君、相当の通だな。
ヘッ、奢りなら飲まなきゃ損だからな……
君は何にする？
何でもいい、お前に任せる。
なら、今日のスペシャルドリンク「ガラスヴィレッジ」にしよう。クラシックスラーダに爆発レモン果汁を加えた、口当たり爽やかで、君のクールな雰囲気にも合った逸品だ。ちょっと待っててくれ。
……
ぎゃはは！この濃厚な黒色火薬で焼いた肉に、過酸化水素水をぶっかけた味、まったく…最高だぜ！さすが銀河系で最高のシェリー樽熟成モルトジュースだ。
「黒色火薬で焼いた肉に過酸化水素水をぶっかけた味」…それは本当に人間が美味いと感じる味なのか？
へへ、コイツ全然わかってねぇな。
2人とも満足してくれたようだな。それじゃあ、ごゆっくり。
バーテンダーが去った後
半システム時間待って、あのメモキーパーが現れなかったら他の方法を考えよう。今は現状を整理するのにうってつけの時間だ。アンタから見て、問題はどこにあると思う？
状況は確かに不透明だ。宴の星で何かあったのは間違いないが、なぜか一般人はそれを認識していない。恐らくファミリーの権力者が事態を隠蔽しているんだろう。
そもそも、「調和」が他の派閥を招待するというのが普通じゃない。カンパニーや愚者に加え、「虚無」の使令が来ているというお前の話が本当なら、ピノコニーの現在の状況は…少し複雑すぎる。
「黄泉」に関しては、他にも気になることがある。
アンタも知ってるだろうが、「巡狩」を信仰する派閥は銀河の中で最も危ない連中だ。少しでも頭が回るヤツなら、仙舟同盟や巡海レンジャーの名を騙ったりしない。それは死を求める行為だからな……
仙舟にはこういう言葉があるだろ、「帝弓はただ光の矢を以ってそいつをリンチする」──
綸旨、「それを綸旨とする」だ。
知ってんならそれでいい。とにかく、巡海レンジャーは長い間姿を消してるが、その実この宇宙をずっと陰から見張ってきたんだ。大抵のベイビーはアナイアレイトギャングにちょっかいは出しても、レンジャーを怒らせるようなマネはしねぇ。
だが、あの黄泉ってヤツは…少なくともアイツがしたことを考えると、イカれてるとは思えねぇ。むしろ理屈と筋は通ってる。どこで手を引いて、どこで踏み込むか弁えてるんだろうな。
そんな人物が巡海レンジャーの名を借りているのは、別の目的があるからだと思っているんだな？
そう断定したわけじゃねぇが、なんか引っ掛かるんだよな。マジで巡海レンジャーに知り合いがいるのか、何か別の理由でオレらを引っ張りだしてぇのか…それはわかんねぇけど。
俺はやはりファミリーの異変が気になる。この祭りのために、十数種類の運命の行人がピノコニーに集められた。いくらファミリーが寛容だとしても、普通ならこんなことはしないだろう。
あの招待状が彼らの出したものでないなら別だが、こんな状態でもファミリーが調和セレモニーの開催を止めないのは…非合理的だ。
全部「調和」のシペの指示なのかもしんねぇな。アンタは非合理的だって言うが、それはあくまで人間の尺度で考えたらの話だ。
人間ってのは本能的な衝動でバカをやったり、自分の利益が関わると原則を捨てたり、信じちゃなんねぇもんを信じたりする。それどころか、ベイビー、人間は自分で決めたばっかのルールすら破ったりするもんだぜ！
だが星神ならそんなことはしねぇ。ただ最初に決めた道をひたすら突き進む──壁にぶち当たっても方向を変えたりしねぇんだ！
この事件の背後には、シぺの意志が働いていると思うか？
そうとは限らねぇが、超常的な意志が働いてるのは間違いねぇだろうな。だが、オレは別に悲観してるわけじゃねぇぞ、兄弟。人間の自由意志が信用できるもんなら、巡海レンジャーは何のために存在する？
全部星神と運命のせいだと思えば、事はそんなに難しくねぇ。嵐が永遠に「巡狩」の道を行くのも、アキヴィリがいなくても列車が開拓の道を走り続け、決して脱線しないのも同じことだ。
だが俺は、アキヴィリの消失は…其がナナシビトのために残した貴重な遺産だと思っている。
ふん、それは「絶対的に正しい」指導者を失ったことで、ナナシビトたちは自分の選択に責任を負わなきゃいけなくなったから、か？
ああ、俺の旅の意味は「絶対的に正しい」道を歩むことではなく……
数え切れないほどの道の中から、自分の限られた知識と判断で、できるだけ「自分に合った道」を選ぶことだと思うんだ。
アンタが何を経験してきたのかは知らねぇが、人間は自分に責任を負わなきゃならねぇって点には賛成するぜ。誰も代わりになんかなっちゃくれねぇからな。
だからこそ、巡海レンジャーは絶対にあの偽物を探し出して…アイツが何をする気なのか突き止めなきゃなんねぇんだ。
……
万が一あのメモキーパーが現れなかったら、オレに予備プランがある…これが最後の1つだ。
お前の予備プランは一体いくつあるんだ……
オレ、本当はあんま回りくどいの得意じゃねぇんだよな。いつものやり方ができるなら、もう少し楽なんだが……
丹恒、アンタホテルを一周したって言ってたが、身分の高そうな客とか、そういう集団は見かけなかったか？
…何を考えている？
決まってんだろ。こっそり何人か縛って人質にすりゃあ、後はどうとでもなる。ファミリーとの交渉も、そいつらの身分を騙って──
ダメだ、今すぐ列車に戻るぞ。
なんでだよ！ビビってんのか兄弟？その槍は飾りか？今こそ度胸を見せる時だろうが！
2人とも、もう行くのか？じゃあ、今さっき注文したアスデナのホワイトオークはキャンセルでいいな？
…あ？アスデナのホワイトオーク？アンタさっきはないって……
ははっ、2人とも少し酔ってるみたいだな。たった30秒前にアスデナのホワイトオークを注文したばかりじゃないか。
どうやら…お前のメモキーパーの友人が来たようだぞ。
…ああ、そうだ。オレ、義体を改造しすぎて忘れっぽくなっちまったんだった！見せてくれ…ベイビー！マジでアスデナのホワイトオークじゃねぇか！ん？何か書いてある……
…「星穹列車で待ってるわ」。
彼女からのメッセージで間違いなさそうだな。恐らく俺たちが一緒にいることも、ホテルが安全ではないことも知っていたから、人目を避けられる場所に移動したんだろう。
結局大回りして星弯列車に逆戻りかよ…おい、グズグズしてねぇでさっさと行くぞ！
列車に戻る
お、帰ってきたか！ついさっき乗ってきた2人の客が、ブートヒルを探してると言っておったぞ。今はラウンジで待ってもらっておる。
おう！ちょうどいいタイミングだな。
…2人？
彼女じゃ。星穹列車はどんな乗客も歓迎するが、どいつもこいつもこっそり忍び込んできおって…オマエら、さすがに堂々としすぎではないか！？
ごめんなさい車掌さん、失礼をお詫びするわ。ガーデンの人間には慣れていると思ってしまって…今ピノコニーの情勢はとても複雑で、信頼できるのはナナシビトの皆さんだけなの。
お前が例のメモキーパーか？
はじめまして、丹恒さん…とは言っても、私は他の人の記憶の中で会ったことがあるけど。そしてブートヒルさん…あなたとも実際に会うのは初めてね。アスデナのホワイトオークは気に入ってもらえたかしら？まったく、随分手に入れにくいお酒を注文してくれたわ。
そんなことより、よくも探し回らせてくれたな、メモキーパー！早速だが、知ってることを洗いざらい話してもらうぜ。
勿論。でも、その前に自己紹介させてちょうだい。私はブラックスワン、ガーデン・オブ・リコレクションのメモキーパーよ。そして、こちらの黄泉さんについては……
彼女自身に話してもらった方がいいでしょう。
はじめまして、黄泉だ。
はあ！？ホーリーベイビー！──おいガーデンの、オレを裏切ったな！？
誤解しないでくれ、これは私が頼んだことなんだ。わけあってピノコニーから追放されてしまって…このメモキーパーがー緒に来てくれたおかげで、密かにファミリーの支配から抜け出すことができた。
実際には一緒に来たんじゃなくて、尾行してたのよね。やり方も決して「密かに」とは…まあ、そう思っているならそれでいいわ。
私は彼女にファミリーの目の届かない場所へ連れて行くこと、そして信頼できる人へ連絡するよう頼んだ。つまりあなたたちだ。
信頼？ははは、ははははは…おいカワイ子ちゃん、アンタはオレをアホかマヌケだと思ってんのか？
だとしても、まずはアンタのどてっ腹にいくつか穴開けて、何が入ってんのか確かめてさせてくれ。それから「信頼」について話そうぜ……
その必要はない、あなたが知りたいことは全て教える。だが、それは今じゃない…私の正体がバレていなければ、もう少し時間があったかもしれないが…今はこうするしかないんだ。
「しかない」？何が「しかない」だぁ？
こうすることでしか、私はあなたたちの安全を保障できない……
頼む…星穹列車は今すぐ跳躍して、アスデナ星系を離れてほしい。
……
それはどういう……
私の見立てでは、彼女に悪意はない。本当のことを言っているわ。
丹恒、私はあなたの仲間にしばらく同行したことがあって、彼らがどこにいるかも知っている。ナナシビトたちは無事だ、それは信じてほしい…だが同時に、彼らは私たちの助けを必要としている。
ブートヒル、もう気づいていると思うが…私はあなたを待っていた。巡海レンジャーの行方は定かではなく、お互いの交流もほとんどない。だからこんな方法でしか、あなたたちと「連絡」が取れなかったんだ…どうか許してくれ。
こうしなければ、本物の巡海レンジャーに会うことはでぎなかった。そして、こうしなければ…私は長年の約束を果たすことができなかったんだ……
…「彼」の遺品を、元の持ち主に返すという約束を。
黄泉の回想
ある人は言った…すべての雨は、天が世界に与える慈悲であると。
雨は神の涙であり、人の世の悲しみに呼応して流れる…それがまだ降っているということは、神々はまだこの世界への希望を失っていないということだ。
だから……
……
この雨は、どれくらい続いている？
かつては私も君と同じように、いつかそれが止むことを願っていた。そして数年、数十年が経ち…ついに、この雨よりも先に「希望」が終わりを迎えてしまった。
どうやら、君の言う神は存在しないようだ。
そう言いながら、老人はずっと遠くを眺めていた。黒い雨の中、煙のように姿を変える、朦朧とした手の形をした無数の影が、1つ、また1つと海から空へと伸びていく。
さて、私のほうからも、1つ昔話をさせてもらおう……
凡人が運命の道を歩むというのは、小舟に乗って水面を渡るようなものだ。曲がりくねった跡を残しながら、可能性という名の無数の波紋を広げていく。一瞬にして過ぎ去る人間の一生に比べ、こうした波はいつまでも消えることはない。
そして中には、その存在の痕跡が強烈すぎて、その一筋の波に自分の影を残してしまう者もいる。
あの…海面の影のように。
「血罪霊」…運命の行人の執念。それは�修留討�ら生まれ、自らを当事者だと思い込み、無意識に故人の生前の行いを繰り返す。
それは「虚無」から生まれ、「虚無」へと向かい、無意味な生涯を送る。だが、そんな虚しい幻影の群れも ……
…かつては私の大事な仲間であり、巡海レンジャーの一員だった。
あなたは…あれを見守っているのか？
見守る？いいや、私はあいつらをあの世へ送っているんだ。
あれは悲惨な戦争であり、宇宙を揺るがした大討伐だった。宇宙は絶滅大君「誅羅」の死を目撃したが、その代償は…実際に経験した人間を除いて、それを覚えている者はいないだろう。
「巡狩」の意志は命が尽きても消えることはない。だから、誰かがその魂を導いてやらねばならないのだ。彼らは皆、生前は英雄だった。死後に「虚無」の傀儡に成り下がるべきではない。
そして私も…あの戦場で多くを失い、二度と旅に出られなくなった。だからこそ、その役目に最も相応しい人間になったのだ。
だがあなたは、これらの血罪霊が…結局、彼らではないごとを知っている。
君から見れば、この行いに意味はないか？
しかし、意味はなくとも、やらなければならないことはある。
……
私も手伝おう。
なんのために？
「虚無」の意味…それは私の求めていることでもある。
…そうだな。常人なら、この地に足を踏み入れることもないだろう。
ありがとう、見知らぬ者よ。旅の途中で、その答えが見つかることを祈っている。
その前に、もう1つ聞きたいことがある……
確かに血罪霊の行い、そしてその一生は、私たちの視点で見れば意味がない。だが、もし ……
これが死者たちの望んだ結果だとしたら、私たちはそれを変えるべきなんだろうか？
いい質問だ。そして、それに答えるのは難しい。少なくとも…私はその答えを知らない。
ただわかっているのは、いつかは私もこの世を去るということだ。その時には ……
私の墓前にも花を手向けてくれる人がいることを、心から願う。